「あーーっ、また地震 .... 。」環太平洋は地震ばかり。
せっかく気合を入れて測定している HNCOCACB-trosy が台無しです。次の測定時間が来るまで帰属作業もおあずけ。と落胆していたのですが「待てよ、これは NUS(non-uniform sampling)で測定していたんだ!」ということを思い出しました。そこで測定をそのまま続け、先ほど測定が無事に?終わりました。下が3日分の FID 信号を左から右に並べた図です。
変な FID が一つ混じっています。これを拡大すると、振幅が他のに比べて異常に大きいことが分かります。フーリエ変換すると、やはり水のピークでした。
地震でシムがむちゃくちゃになり、水 1H の周波数がブロードになり、水選択パルスの効率が落ちて FID に水の信号が乗ってしまったのです。しかし、NUS ならば、この FID と周辺だけを除くと問題ないはずです。今からそれを試してみようと思います。
まず問題の FID の番号が 2519 であることが分かりました。#2518 と #2520 は問題ないようです。ところが、15N と 13Cab の両方を real と imaginary で測定していますので(厳密には TROSY ですので、15N 軸はそうではありませんが)、#2519 を含む4つの FID をいっしょにセットで除かないといけません。すると、#2517 から #2520 の一連の FID がそれに相当することになります。また、NUS の番号では 2520/4=630 になりますので、NUS-list の 630 行目を消さないといけません。というわけで早速 Perl で4つの FID を除くプログラムを書きます。もう Perl を使っている人なんていませんね。皆 Python 一色です(駱駝の化石です。でも生きている蛇は苦手。若手の人には意味不明かも)。念のため最初は4つの FID 部分に zero を入れて、本当に目当ての箇所のデータを書き直しているかをチェック。結果、バグっていました。歳をとるとこれしきのプログラムですら間違えてしまいます。情けない。書き直して再挑戦。今度は大丈夫でした。後は fid.com の NUS の数値を誤魔化して go です。ついでに Smile も。
HNCACB-trosy と HNCOCACB-trosy を並べてみました。前回は、重水素デカップリングがうまくいかず何度も試しているうちに試料に凝集が起きたりして、HNCOCACB では1割以下の数しかピークが出ませんでした(しかも N-, C-末端部分のみ)。今回は期待できそうです。
HNCACB のとあるピークと HNCOCACB のとあるピークが同じ化学シフトにあるように見えます。これは HNCACB では 1H(i), 15N(i), 13Cab(i-1) の共鳴もついでに見えるためです。しかし、よく見ると、ほんの少しですがずれている場合があります。これは、13Cab(i-1) と13Cab(i) の共鳴値がほとんど同じであるために起こります。図の縦線が引かれている箇所の 13Ca ピークをご覧ください。この蛋白質にはこのようなケースがたくさん見られ、これをさっと見分けるには数年の経験を要するかもしれません。しかし、この程度でもずれていたらそれは重なっているピークなのだということさえ認識できれば、問題ないと思います。若手のみなさん、AI に負けないように頑張りましょう。
重水素デカップリングの問題も NUS の導入からは全く出ていません(この前の記事をご参照ください)。NMRPipe による NUS-IST もお見事です。Smile は線形はよいのですが、それゆえスペクトルは時間データに忠実な感度になるようです(NOESY 向きか?)。一方、IST は魔法がかかって騙されたかのようにシャープな感度のよいピークをプレゼントしてきます(その分、線形が崩れることもありますが、今は質より量が大事)。よって、とにかく帰属ができるかできないかのぎりぎり路線で戦っている(塵であってもピークかもしれないという可能性に賭けて拾っている)今の状況では、とても有難い存在です。
ところで、今更なのですが(real time で書いていたため)。
上記のように、地震が起きた時の FID データをせっせと除いたのですが、除かないでプロセスしたデータと試しに見比べてみた結果、ほとんど違いはありませんでした。お笑いです。時間軸データにおいてある点だけが局所的に変になったとしても、それをフーリエ変換などで周波数軸スペクトルに転換すると、被害が散らばってしまいます(局所的←→全体的)。ほんの少しだけスペクトルのノイズが多くなったのかもしれませんが、と思い込んでおきましょう。
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