論文を見ていると、しばしば "Solution structure of xxxx as determined by NMR spectroscopy" といった題名を見つけます。GoogleScholor で "as determined by NMR" をサーチしてみると、なんと 14,300 件もヒットしました。"as determined by X-ray" で試すと 24,100 件、"as determined by cryo EM" では、もうすでに 140 件、まあ、それはどうでも良いのですが。
問題はこの "as determined ..." の as は何者?一応 Google 翻訳と Bing 翻訳に投げると "Solution structure of xxxx as determined by NMR spectroscopy" は「核磁気共鳴分光法で決定された xxxx の溶液構造」と和訳されました。as は「.... のような」という意味をもつような気もするのですが、どうなっているのでしょう?
まず、この as の品詞がよく分かりません。そこで、ちょっと調べてみました。
「and と as の底力」(佐藤ヒロシ著)
(1)This technology as we know it has been developed within a few years. : 私達が知っているこの技術は数年のうちに開発されたものである。
どうして "as we know it" のように it が付くのか不思議でしたが、ここが重要らしいです。つまり、この as は関係代名詞として使われているのではなく、"as we know it" 「私達が知っているような」と全体で直前の technology を修飾するらしいのです。As には関係詞のように使われる用法もありますが、もし上記の例文がそうだとすると、it が入るのは変です。
(2)real English as it is actually used:実際に使われている生の英語
これも上記の(1)と同じ接続詞としての用法です。ところが、受け身の it is が時々省略されます。これがちょうど "as determined by NMR" に相当します。つまり、 "Solution structure of xxxx as it is determined by NMR spectroscopy" が本来の表現で、ここから "it is (was)" が省略されたという事情のようです。(1)と(2)は同じ様式ですので、ここでの as は疑似関係詞ではありません。したがって、"as is (was) determined by NMR" という表現は(時々見かけますが)間違いのようです。実際 GoogleScholor で検索すると、36 件しかヒットしませんでした。
(1,2)ですが、これは、ある一つの事を別の角度から見た場合などに使うのだそうです。よって「同じ蛋白質の立体構造ではあるが(X-線でもクライオ電顕でもない)NMR という手段でもって眺めた時の構造」という名詞限定の仕方になるのでしょう。
では、ここを関係代名詞の that で限定してはいけないのでしょうか? "Solution structure of xxxx that was determined by NMR spectroscopy" ここは私の勘ですが、that による限定が強過ぎて「X-線、クライオ電顕、NMR で解いた構造はそれぞれ異なる」という強い前提が入り過ぎるのではないかと思います。つまり「これは NMR 構造ですよ、結晶構造とは全く異なるのでそこのところをよく心に留めて私の論文を読んでね」というニュアンスが入るのではないかと推測します。例えば、溶液内では2つのドメインがお互い相手に対して開いているが、結晶構造ではクリスタルパッキングのために2つのドメインが小さく閉じこもっているような構造の違いがある場合などでしょうか?
では、関係代名詞 which を使ったら?これは高校受験の参考書によく載っています。なお「, which」とコンマを付けないといけません。 "Solution structure of xxxx, which was determined by NMR spectroscopy" の場合「xxxx の構造ですよ。おっと言い忘れていましたが、ちなみにこれは NMR で解きました」という付加的な意味になります。
ちょっと極端な和訳ですが、"that" と ", which" の違いは以下のようになるでしょうか?
(3)I discarded the crystals that seemed broken. : 私は壊れているように見える結晶だけをちゃんと選んで除きました。壊れていない結晶は、もちろん言うまでもなく、そのまま育てていますよ。
(4)I discarded the crystals, which seemed broken. : 私は失望して一切合切それら結晶をまとめてゴミ箱に捨てました。だって、それらは全て壊れているように見えたためです。
この(3,4)には大きな違いがあります。院生が先生に(3)を言ったら褒められますが、(4)を言ったら。。。"the" が付いていますので、院生と先生の両方が会話の場で想定できる結晶全てということになります。もし、日本では法令で定められている計画停電の翌日に、実験室内の結晶全てについて二人で話していたとしたら、その実験室内の結晶すべてを流しに捨て去ったことになり。。。あとは想像にお任せいたします。
ちなみに as が but, then などの同じように擬似関係詞として使われることもあり、これは受験参考書に詳しく書かれています。以下の例文は全て、現代英文法講義(安藤貞雄著、開拓社)より抜粋しました。
(5)such as
Such girls as he knew were teachers.:彼が知っているような女の子は先生だった。
(6)the same as
I have the same difficulty as you have.:私も君と同じような困難を抱えている。
(7)as many as
There is as much money as is needed.:必要なだけの金はある。
(8), as you know.
As was expected, he did not turn up.:予想通り、彼は姿を見せなかった。
as は文全体を受けています。文の前方にも置ける点が特徴的で、やはり接続詞であるという理論も強いようです。上記の例文で as の後に what が省略されていると考えることもでき、その場合は、接続詞として使われていることになります。
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