https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29367739/
Nat Commun. 2018 Jan 24; 9(1): 356.
doi: 10.1038/s41467-017-02767-8.
Mixed pyruvate labeling enables backbone resonance assignment of large proteins using a single experiment
蛋白質の主鎖を帰属する際には、一般的に 3D HNCO, HNCACO, HNCACB, CBCACONH などのスペクトルが用いられます。しかし、分子量が 50 kDa を超えると、これら 3D スペクトルの感度が低下し、せいぜい HNCA だけが頼りになるのが現状です。ところが、この HNCA では、蛋白質中の Cα および Cβ がともに 13C で標識されているため、13Cα ピークに 1J(cαcβ) による分裂が生じてしまいます。そのため、従来の HNCA では、この分裂が目立たない程度の分解能にとどめることで対応してきました。
もし、13Cα の隣接炭素(Cβ)が 12C であるような蛋白質を調製できれば、この分裂の問題は解消されます。これまでに、[1-13C]-グルコースや [2-13C]-グルコースを用いる方法が提案されてきましたが、これらでは調製される蛋白質の半分にしか 13C が導入されないという欠点がありました。この欠点を克服する手法として提案されたのが、[2-13C]-ピルビン酸および [3-13C]-ピルビン酸の利用です。すべてのアミノ酸種で Cα が完全に 13C 標識されるわけではありませんが、両者を併用して大腸菌を培養することで *、この欠点はある程度解消されます。
さらに、これらの試薬を NaOD で処理することで(pH 13)、メチル基の水素を 2H に置換することが可能です。これにより、高い重水素化率を持つ蛋白質の調製が可能になります。
[2-13C]-ピルビン酸および [3-13C]-ピルビン酸が安価に入手できれば、大きな分子量をもつ蛋白質の帰属解析に広く利用されると期待されます。
むか~し、むか~し、4D HNCANH というパルス系列を発表しました。これを使うと、1H/15N から両隣の 1H/15N への帰属が分かるのです。今は Bruker 標準パルスプログラムで HNCANNH という名前で載っています。これの欠点は、13Cα と 13Cβ の 1J カップリングなのです。 [2-13C]-グルコースを使う手もあるのですが、当時はまだ知りませんでした。また、 [2-13C]-グルコースを使ったとしても、実質的な 13C 密度は半分になり、重水素化率も中途半端になります。しかも、価格が高いそうです。一方 [2-13C]-ピルビン酸は、これよりかは良いような気がします。
この [2-13C]-グルコースの瓶を棚に置いておいたのですが、先日みてみると、無くなっていました。誰か [u-13C6]-グルコースと間違えて使っていない?誰か、HNCACB が見えない!とか騒いでいなかったっけ?
(*)アミノ酸の生合成では、解糖系に由来するアミノ酸と TCA サイクル経路途中で作られるアミノ酸に分けられます。 前者のアミノ酸については、単純に [2-13C]−ピルビン酸から 13Cα が導入されます。ところが、後者のアミノ酸については、Cβ にも 13C が導入されてしまいます。これは [2-13C]−グルコースを使った場合でも同様です。その結果、13Cα のピークの形状がやや不均一になります(中途半端なカップリングがあるため)。しかし、著者らはこの特性を逆にアミノ酸種を推定するために利用できると主張しています。
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