2013年4月4日木曜日

9.4 テスラの MRI は?MHz

「化学や生化学の実験で使っている NMR と、病院で使われる MRI は基本的には同じです」とよく見学者に説明することにしています。「しかし、NMR のように上空から穴の中に飛び込むのは流石に怖いですよね。だから、MRI は寝転びながら磁石の中に入れるように横向きになっているのです ... 。」などと言うと、「なるほど!」と強い関心を持って頂ける。そのような訳で、時々 MRI の記事や論文も読むのですが、「人の頭の断層写真を撮るのに 9.4 T(テスラ)の磁石を使っている」などと書かれていても、9.4 T は 1H 周波数に換算すると何 MHz ???? 大きいのか小さいのかピンと来ないのです。

そこで、換算式をググってみると、

1 T = 42.58 MHz
1 T = 42.576 MHz
1 T = 42.577 MHz

などなど、これらの前後の値がいろいろ目立つことに気付きました。どの値がいったい本当なのでしょう?

そこで、理科年表(H15 年版)の定数をもとに計算してみることにしました。このブログではギリシャ文字が使いにくいので、下図を使って、きれいなフォントで示すことにします。




単純に 1H の磁気回転比を使うと、

1 T = 42.5764011 MHz

となりました。もちろん、有効数字が何処までかなどの細かい点は無視していますので、末桁の数値は信用しないでください。ちなみに、磁気回転比の値は、

Park, P.G. and Kim, Y.G. (2003) Magnetic flux density standard based on the proton gyromagnetic ratio. Journal of the Korean Society 42 (6) 751-754.

から採りました。一方、磁気回転比を 1H の磁気モーメントとプランク定数から出してくると、

1 T = 42.5774825 MHz

になってしまうのです。このように、どの定数を使うかによって、小数点3桁目に少し違いが出てきてしまうわけですね。

困ったな。。。と思ったのですが、結局、MHz と T の換算表を作り、小数点1桁までテスラ値を四捨五入してみると、どちらを使っても同じ値になってしまいました。何をそこまで苦労していたのだか。



それにしても、覚え難いですね。43 という数値を覚えていたら、およその計算が頭の中で出来るでしょうか?あるいは、

20 T = 850 MHz

と覚えておいて、ここから概算で暗算すれば良いでしょうか?あるいは、

7 T = 300 MHz

の方が良いでしょうか?(厳密には、7.05 T = 300 MHz であるので、900 MHz では 21.14 T と繰り上がってしまう。)うーん、この最後のが良いかもしれません。7 と 3 を足すと 10 ですし(何というこじつけ)。この装置が新潟大学や岩手医科大学で動いているそうです(もうすぐ阪大でも)。では、やはりこれを基準にすることにしましょう。

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