Saccharomyces cerevisiae は清酒酵母でもありますので、この単語をそのまま英辞郎で引くとちゃんと(出芽酵母)と出てきました。しかし、NMR の解析用の蛋白質を発現させるのに時々(希に?)使われる Pichia pastoris の方を英辞郎で引くと「そのような物はこの世に存在しません」「もしかして牧師?」などと返ってきます。
気を取り直して yahoo で引くと、何と蛋白質科学会アーカイブの櫻井先生の記事が飛び込んできました。ちゃんと NMR の試料調製用に書かれており、この学会のアーカイブは本当にすばらしいコレクションです。では、この櫻井先生の文章をちょっと(変えて)拝借することにいたしましょう。
メタノール資化酵母、よく「ピキア」と呼ばれる。目的の蛋白質に酵母特有のシグナル配列が付くように遺伝子を設計すると、翻訳された蛋白質が培地中に分泌される。そのため、遠心した後に上清を集めるだけで、かなり精製が進んだことになる。さまざまなシャペロン蛋白質の働きにより、大腸菌発現系よりも高い成功率で蛋白質が折り畳まれる。したがって、多数のジスルフィド結合を持った蛋白質をちゃんと fold させた状態で得るのに適している。
なるほど、お金と手間は大腸菌発現系よりかはかかるらしいですが、大腸菌でどうしても駄目(unfold した状態で発現してしまう)というような場合は、このように酵母を発現系として考えてみるのも良いでしょう。
そのような中(実はもう数年前だったのですが)もう一つ別の種類の酵母 Kluyveromyces lactis を使った発現系が下記に紹介されていました。
Sugiki, T., Shimada, I., and Takahashi, H. (2008) J. Biomol. NMR 42, 159-162.
このラテン学名、本当は斜字体で書かないといけないのですが、何と読むのでしょう?ウェブには「クルイヴェロマイセス・ラクティス」と仮名が振られていましたが、同時に「キラー酵母」とも書かれていました。何とも怖そうな名前の酵母です。
この論文によりますと、[13C]-メタノールで育てる(同時に、目的蛋白質を誘導させる)ピキアとは異なり、このラクティスには葡萄糖が使えるのだそうです。そして、もともとは 20g/(L 培地)程度の大量の葡萄糖が必要と考えられていたそうですが、新しい培地を酵母の成長とともにどんどん追加していくような方法により、最終的には 5g/L 程度まで [13C]-glucose を減らせるのだそうです。そこまで節約できるならば、不安定な蛋白質を大腸菌で何度も(従って合計すると何十リットルもの培地を使って)調製する場合よりも安価になるかもしれません。
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