Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt)
です。これは磁化ベクトル I が x 軸から y 軸に向けて、化学シフト値 ω で回転している途中の様子を表します。ここに J-coupling が入ってくると、2IxSz などの(文字通り)直積演算子が出始め、途端にややこしくなってきます。そこで、今日は J-coupling には触れずに、ここに傾斜磁場勾配(gradient)をかけた場合の式を考えてみましょう。余計ややこしい?
しかし、ある法則を使うと、意外にも簡単にグラジエントを含んだ式が扱えてしまうのです。その法則とは、
Ix cos(A) + Iy sin(A) = {Ip exp(-iA) + Im exp(+iA)}/2
です。ここで、Ip は I+ を、Im は I- の事を表します。図の方では添え字をちゃんと記していますので、そちらをご覧ください。では、この公式を最初の化学シフトの展開の式に当て嵌めると、次のようになります。
Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt) = {Ip exp(-iωt) + Im exp(+iωt)}/2
この右辺は「+1 量子のコヒーレンスは -ω で回転し、-1 量子のコヒーレンスは +ω で回転する」と読みます。では「+2 量子のコヒーレンスはまさか -2ω で回転するのか?」と尋ねられそうですが、もし、その二つの核種が同じで同じ化学シフト値を持っていたならば yes です。何故、+1 量子コヒーレンスと -1 量子コヒーレンスとで回転の向きが異なるのかという問いには、こちらも勉強不足であまり上手く答えられません。一応、電磁波を吸収する場合と、逆に放射する場合とに対応しているのかな?という程度に覚えています。ここであまり回転を意識し過ぎると、左辺の x, y, z 座標での磁化ベクトルの回転とごっちゃになってしまいます。難しいです ..... 。
では、ここに gradient をかけてみましょう。教科書で gradient の頁をみると、よく「I+ にはグラジエントが正で働き Ip exp(iG)、I- にはグラジエントが負で働く Im exp(-iG)」などと書かれています。そのため、せっかく途中まで Ixyz を使って進めていた product operator を、グラジエントのかかった箇所でわざわざ I+, I- に変換しないといけないような事態になってしまいます。そして、グラジエントをかけ終わった後には再び Ixyz に戻すといった事に。。。このような相互変換は大変面倒です。
実は、グラジエントの場合でも「+2 量子のコヒーレンスはまさか +2G でとぐろを巻くのか?」と問われれば、同種核であれば yes となるのです。この法則は化学シフトの場合と同じであり、化学シフトの回転とグラジエントのとぐろ巻きを、同じ Ixyz どうしで表せることを意味します。
途中の式は図の方に譲りますが、結果として、
Ix cos(ωt-G) + Iy sin(ωt-G)
となります。図の方には G だけでなく γ, τ, z などの文字が付いていますが、覚える時に邪魔になってしまいますので、今はシンプルな上の形で覚えておくことにしましょう。
もちろん、Ip, Im の式にいちいち戻らなくても、上の式を得ることはできます。それは、化学シフトの回転とグラジエントのとぐろ巻きは数式的には似ているためです。
Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt)
→ { Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt) } cos(G) + { Iy cos(ωt) - Ix sin(ωt) } sin(G)
= Ix { cos(ωt)cos(G) - sin(ωt)sin(G) } + Iy { sin(ωt)cos(G) + cos(ωt)sin(G) }
= Ix cos(ωt+G) + Iy sin(ωt+G)
書いてしまってから思いましたが、こちらの方が簡単そうですね。
もちろん、Ip, Im の式にいちいち戻らなくても、上の式を得ることはできます。それは、化学シフトの回転とグラジエントのとぐろ巻きは数式的には似ているためです。
Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt)
→ { Ix cos(ωt) + Iy sin(ωt) } cos(G) + { Iy cos(ωt) - Ix sin(ωt) } sin(G)
= Ix { cos(ωt)cos(G) - sin(ωt)sin(G) } + Iy { sin(ωt)cos(G) + cos(ωt)sin(G) }
= Ix cos(ωt+G) + Iy sin(ωt+G)
書いてしまってから思いましたが、こちらの方が簡単そうですね。
最後にプラスやマイナスの符号が本によって逆になっており、どれが本当か分からないという印象を持たれるかもしれません。この +- は定義によって逆転しますので、全く気にしないでください。ご自身の解釈の中で統一されていれば、それで充分です。実際、実機で実験してみると、配線の仕方によって、さらに逆転することも多々ありますし。
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