kex > Dw (fast exchange)
kex = Dw (intermediate exchange)
kex < Dw (slow exchange)
と書かれています。ここで、kex の単位は(1/sec)であることに異存はないのですが、問題は Dw の単位です。私は(rad/s)が正解だと思っています。ところが、多くの人から「それは間違っている、正しくは(Hz)である」と指摘、撃墜され続けてしまい、おまけに、「kex と比べる場合の化学シフトの差の単位は Hz だから、気を付けるように」と書かれた教科書まで出現する始末です。
確かに、kex(1/s)と Dw(rad/s)を比べるのは変に見え、いかにも kex(1/s)と Dw/(2pi)(Hz)を比べるのが当然のようにも見えます。しかし、そんなはずはないと思い、シュミレーションしてみると、むしろ、ちょっと変な結果になってしまいました。 どうも、
kex (1/sec) = Dw (rad/s) / root(2)
あたりで、もっともブロードになってしまうのです。
また、別の本を見てみると、次の式が出ていました。
Kr = pai*(va-vb)/root(2) = pai*Dv/root(2) = 2.22Dv(Hz)
これにおいて、Kr の意味を kab だけだと解釈すると、上記の式と一致して来ます。 しかし、Kr が何故大文字で書かれているのか?とうとう、その正体が分からず断念しました。どうも、いろいろな本を見れば見る程、少しずつ違った式が表れ、ますます混乱して来ました。他にもいろいろと探していると、やっと
Sudmeier, J.L., Evelhoch, J.L., and Jonsson, N.B.H. (1980) Dependence of NMR lineshape analysis upon chemical rates and mechanisms: implications for enzyme histidine titrations. J. Magn. Reson. 40, 377-390.
に上式を支持する式が載っていました。やはり、kex (1/sec) = Dw (rad/s) / root(2) で良いのかもしれません。
ところで、上記での kex は kex = kab + kba なのです。だんだん心配になって来たことは、上記は全て pa = pb = 0.5 の場合ですが、実際には pa = 0.95, pb = 0.05 のような場合もあることです。すると、kab << kba となります。このように skewed された平衡状態においては、a 側のピークは kab に支配されて、どちらかというと slow-exchange に近くなり、他方、b 側のピークは kba に支配されて、どちらかというと fast-exchange に近くなるのではないかと思い始めました。
もしかして、試料の温度を上げたり、磁場強度を下げたりすると(つまり、fast-exchange の条件にさらに近付ける)、小さな b 側のピークは、どんどん a 側に近付いていくのに対して、 a 側のピークは強度のみが小さくなるだけで、それ程移動しないといった挙動が見られるのかもしれません。
せっかくシミュレーションプログラムを作ったのだから、試せば良いのですよね。ついでに 2D ZZ-exchange のシミュレーションプログラムも作ってみました。何を血迷ったかエクセルで作り始めてしまい、慣れない行と列の扱いで混乱。しかし、等高線プロットの色彩感覚が悪く、もう数日は練る必要がありそうです。それはそうと、転移交差飽和法の項を書きかけたままでした。早く戻らないと、どんどん脇道に逸れてしまいそうです。
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