2013年3月8日金曜日

ZZ-交換 2

前回のスライド図に数式を(書いたではなく)描いたのですが、分解能が悪く、I_AA などの添え字が見にくくなってしまいました。拡大すると何とか見えるのですが。

さて、この4つのピークをどのように解析していけばよいのでしょうか?まず、数式をじっと眺めると、面白いことに気付きます。ここで、p_A + p_B = 1 であることを使ってください。

まず、上2つのピークを足してみましょう。すると、

I_AA (tau) + I_BA (tau) = I_AA (0) exp(-tau/T1)

のようになります。つまり、k_ex が消えてしまいました。同じように、下二つのピークを足すと、次式のように、今度も k_ex が消えます。

I_BB (tau) + I_AB (tau) = I_BB (0) exp(-tau/T1)

もともと A の状態にあったスピンが tau の間に A のままいるか、あるいは、B に移るかするわけですから、両者を足すと交換の速さ kex には無関係になってしまいます。

4つのピークを全て足すと、{I_AA (0) + I_BB (0)} exp(-tau/T1) となりますので、この式を実際のピーク強度の合計値に当て嵌めることで、T1 をかなり正確に決めることができるでしょう。ただし、この場合、A 状態と B 状態とで T1 が同じであるという前提がありました。つまり、A と B とで分子量やその部分のダイナミクスがほぼ同じ程度でないといけません。極端に分子量が違う場合は、もっと複雑な式を使わないといけません。

上記の3つの式から、うまくすると、I_AA (0) と I_BB (0) も求まるかもしれません。これらの値は、理想的には p_A と p_B に比例するはずなのですが、実験条件などによっては、きっちりと比例しない場合も出て来ます。逆に p_A と p_B は普通の HSQC で見積もることができます。ただし、繰り返し delay を例えば7秒のように、充分に長くとってあげてください。この時間の間に縦緩和が完全に起こって、p_A と p_B に比例した磁化の強度になるのです。

このように、I_AA(0), I_BB(0), p_A, p_B, T1 をできるだけ正確に事前に決めておくと、後で楽になります。

次に交差ピークのみを足し算してみましょう。

I_AB (tau) + I_BA (tau) = {I_AA(0)*p_B + I_BB(0)*p_A} {1-exp(-k_ex*tau)} exp(-tau/T1)

ここに先ほどの値を具体的に代入すると、最適化すべき変数は k_ex だけとなり、楽です。もちろん、4つのピークそれぞれに別々のモデル式を同時に当て嵌め最適化させるという方法もあります。それでも似たような値が得られると思いますが、そのような fitting のプログラミングが大変そうですね。

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